地球温暖化問題の再検証 - ポスト京都議定書の交渉にどう臨むか RIETI経済政策レビュー 10
澤 昭裕東洋経済新報社
東洋経済新報社
本書は経済産業省の系列にある経産研がらみの書籍であり、基本的に経産省の見方を代表している。その前提に読み進めば、非常に役立つ文献である。
前提知識から交渉経緯までが豊富な資料とともに示されており、わかりやすい。
京都会議当時は環境問題に異を唱える抵抗勢力扱いされていた経産省と産業界であるが、省エネ型の日本社会を構築したのもまた、この産業界である。そんなことも大っぴらには発言できない異様な雰囲気が当時はあった。
今、本書を冷静に読むことで、今後の国際交渉に求められるものがある程度見て取れると思われる。
経産研のものであるということを割り引けば、資料集として第一級である。
前提知識から交渉経緯までが豊富な資料とともに示されており、わかりやすい。
京都会議当時は環境問題に異を唱える抵抗勢力扱いされていた経産省と産業界であるが、省エネ型の日本社会を構築したのもまた、この産業界である。そんなことも大っぴらには発言できない異様な雰囲気が当時はあった。
今、本書を冷静に読むことで、今後の国際交渉に求められるものがある程度見て取れると思われる。
経産研のものであるということを割り引けば、資料集として第一級である。
文明の環境史観 (中公叢書)
安田 喜憲中央公論新社
中央公論新社
¥ 2,100
通常24時間以内に発送
著者は世界の様々な文明を、畑作牧畜を基盤とする動物型文明であり、近代ヨーロッパ文明の礎にもなった「力と闘争の文明」と、日本を含む環太平洋地域の森と海の風土に育まれた植物型文明である「美と慈悲の文明」に大別し、後者にこそ21世紀の最重要課題である地球環境問題を解決する鍵があると主張する。また著者は、江戸時代の日本のような、自然環境や他民族へのインパクトの少ない自給自足的社会こそ無条件に善であるという信念を持っているようで、その点は少々単純すぎると思うが、戦後歴史学が西欧中心の考えに立つマルクスの発展段階史観を、まったく違う風土の日本にそのまま当てはめた誤りを正し、著者の確立した環境考古学によって、自然環境(風土)も歴史を決定するという当然の事実を実証したことは大きな成果だと思う。
ただ、理系出身の著者らしくデータを重視する客観的な姿勢が、社会・人文系の学者による文明論より濃密に感じられる点は頷けるが、世界の歴史を動かしている要因を、自然環境という外部要因の変動のみに求めているように感じられ、複雑な人間社会を単純化しすぎているとの印象も受ける。また、農耕を持たない新石器文化である縄文時代が1万年以上も続いた日本の特殊性を強調するのは頷けるし、日本文化の一側面として「美と慈悲の文明」と呼ぶことができると書くならまだしも、日本人読者に迎合するかのように、日本人や環太平洋地域の少数民族による、森にも人にも優しく足るを知る「美と慈悲の文明」と、インド・ヨーロッパ語族や漢民族による、むきだしのエゴの「力と闘争の文明」とを対置する書き方はどうだろうか。人間を民族によって単純に二分するような書き方は、読者に地球環境問題は彼らのせいであり、我々日本人には責任はないという主張だと思われかねないので、その点には不満を感じた。
ただ、理系出身の著者らしくデータを重視する客観的な姿勢が、社会・人文系の学者による文明論より濃密に感じられる点は頷けるが、世界の歴史を動かしている要因を、自然環境という外部要因の変動のみに求めているように感じられ、複雑な人間社会を単純化しすぎているとの印象も受ける。また、農耕を持たない新石器文化である縄文時代が1万年以上も続いた日本の特殊性を強調するのは頷けるし、日本文化の一側面として「美と慈悲の文明」と呼ぶことができると書くならまだしも、日本人読者に迎合するかのように、日本人や環太平洋地域の少数民族による、森にも人にも優しく足るを知る「美と慈悲の文明」と、インド・ヨーロッパ語族や漢民族による、むきだしのエゴの「力と闘争の文明」とを対置する書き方はどうだろうか。人間を民族によって単純に二分するような書き方は、読者に地球環境問題は彼らのせいであり、我々日本人には責任はないという主張だと思われかねないので、その点には不満を感じた。
ルポ 諫早の叫び よみがえる干潟ともやいの心
永尾 俊彦岩波書店
岩波書店
¥ 2,310
通常24時間以内に発送
まず読んでください。
腹膨れる思いの残った方は、多分、正常です。
そして、何も感じないか、登場してくる漁民・農民に、何の感情も
湧かない人たちは、良心のかけらもない自分を見出すことでしょう。
腹膨れる思いの残った方は、多分、正常です。
そして、何も感じないか、登場してくる漁民・農民に、何の感情も
湧かない人たちは、良心のかけらもない自分を見出すことでしょう。
この国の100年以上に亘る官尊民卑の縮図がここにあります。
官尊民卑と言うよりも、官だけが、何故、栄えるのか。
この国では、なぜ、民が育たないのか。
なぜ、小泉改革に抵抗勢力が生まれるのか迄、解かります。多分。
しかし、解かったところで、現実にこの10/3、最高裁まで追認した
官の横暴に対して何ができるのか。
腹膨れ、やりきれなさの残る幕切れでは有ります。
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)
ジャレド・ダイアモンド草思社
草思社
¥ 2,100
通常24時間以内に発送
上巻より続く第2部の残りで過去から存続している社会へ目を向けることから
下巻ははじまります。
ここでは、ニューギニア高地、大西洋南西部のティコピア島、そして、森林資源が
損なわれた江戸時代初期の日本を取り上げ、危機的状況に陥りながら、存続へ向けた
舵を切ることで、結果として現在も維持されている社会として取り上げています。
社会的な要因とともに、世襲制が比較的安定していた江戸時代に「環境問題への
社会の対応」の面から、建造物資材、緑肥、薪などに使われる森林資源の利用を
持続可能な管理方式へと幕府というトップダウンにより実施されたことなどが
功を奏した、と考察されています。
続く第3部では、「現代の社会」の例に目を向け、ルワンダ(近隣の敵対集団)、
ドミニカとハイチ(環境被害)、中国(環境問題への社会の対応)、オーストラリア
(友好的な取引相手、環境問題への社会の対応)を詳細に観察し、主要因から
引き起こされる悲劇的状況に真っ直ぐ目を見据えながらも将来への明るい兆しを
付け加えることを忘れません。ここまでで環境面が主効果とされる流れができています。
更に第4部の「将来へ向けて」で、著者の持論が展開され、現在を生きる私達は
いかなる未来を創造するかという選択を迫られます。しかしながら、ここへきて、
やや性急に答えを求める余り著者の意見が環境面に偏りすぎる傾向があることは
否めません。
それでも、現代の複雑かつ相互に関係する集団(国家)の各々および総体へ向けて、
崩壊へ至る各段階、(問題の予期の失敗、問題の発生の検知の失敗、解決案の
立案・実施の失敗、実施内容自体が失敗)の内容を上巻からの多数の事例を元に
丁寧に導き、解決するべき問題を12挙げ、解決策が「最も重要な問題を
解決するだけにとどまらないこと」という、私達の安直な姿勢を戒めることを
忘れておらず、問題のどれかひとつでも未解決のままに残されれば、私達
(すべての国家)は甚大な被害を被ることになる、という重要な警告を発した
意義は大きなものだと思います。
下巻ははじまります。
ここでは、ニューギニア高地、大西洋南西部のティコピア島、そして、森林資源が
損なわれた江戸時代初期の日本を取り上げ、危機的状況に陥りながら、存続へ向けた
舵を切ることで、結果として現在も維持されている社会として取り上げています。
社会的な要因とともに、世襲制が比較的安定していた江戸時代に「環境問題への
社会の対応」の面から、建造物資材、緑肥、薪などに使われる森林資源の利用を
持続可能な管理方式へと幕府というトップダウンにより実施されたことなどが
功を奏した、と考察されています。
続く第3部では、「現代の社会」の例に目を向け、ルワンダ(近隣の敵対集団)、
ドミニカとハイチ(環境被害)、中国(環境問題への社会の対応)、オーストラリア
(友好的な取引相手、環境問題への社会の対応)を詳細に観察し、主要因から
引き起こされる悲劇的状況に真っ直ぐ目を見据えながらも将来への明るい兆しを
付け加えることを忘れません。ここまでで環境面が主効果とされる流れができています。
更に第4部の「将来へ向けて」で、著者の持論が展開され、現在を生きる私達は
いかなる未来を創造するかという選択を迫られます。しかしながら、ここへきて、
やや性急に答えを求める余り著者の意見が環境面に偏りすぎる傾向があることは
否めません。
それでも、現代の複雑かつ相互に関係する集団(国家)の各々および総体へ向けて、
崩壊へ至る各段階、(問題の予期の失敗、問題の発生の検知の失敗、解決案の
立案・実施の失敗、実施内容自体が失敗)の内容を上巻からの多数の事例を元に
丁寧に導き、解決するべき問題を12挙げ、解決策が「最も重要な問題を
解決するだけにとどまらないこと」という、私達の安直な姿勢を戒めることを
忘れておらず、問題のどれかひとつでも未解決のままに残されれば、私達
(すべての国家)は甚大な被害を被ることになる、という重要な警告を発した
意義は大きなものだと思います。
環境 (思考のフロンティア)
諸富 徹岩波書店
岩波書店
¥ 1,365
通常24時間以内に発送
本書は、環境を経済学の視座からとらえたものである。
持続可能な発展をベースとして論じられている。持続可能性については、さまざまな視座や見解が存在している。その中でも本書では、社会関係資本(資本概念)を切り口とし、市民社会論やグローバル化までもを視野に入れ、論じている。
持続可能な発展をベースとして論じられている。持続可能性については、さまざまな視座や見解が存在している。その中でも本書では、社会関係資本(資本概念)を切り口とし、市民社会論やグローバル化までもを視野に入れ、論じている。
本書が経済学だけでなくその他の領域にも有用である特徴は以下の3つ。
①資本概念(社会資本、社会的共通資本、社会関係資本)の拡張が簡潔に論じられている。
②持続可能性に関するさまざまな見解が紹介されている。
③社会関係資本(特にパットナムを中心としながら)に関するさまざまな視座や批判が紹介されている。
以上のような特徴があり、この内容でここまで簡明な類書はほとんど無いと思われる。概観を見るうえでは最良である。文献案内も各領域ごとに解説つきで分けられている。
オススメです。
<図解>東京直下大震災 大惨事を生き抜く知恵と対策
中林 一樹徳間書店
徳間書店
中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」のメンバーである著者が、東京直下大震災で想定される内容について詳しく説明した本です。
被害想定で想定されている内容から、被害の仕組み、対処方法など詳細に説明されています。
中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」の報告書はWebで公開されているが、やはり行政の資料というのは判りにくい部分も多い。
この報告書の内容を判りやすく解説した内容です。さらに復興までの説明もあります。
被害想定で想定されている内容から、被害の仕組み、対処方法など詳細に説明されています。
中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」の報告書はWebで公開されているが、やはり行政の資料というのは判りにくい部分も多い。
この報告書の内容を判りやすく解説した内容です。さらに復興までの説明もあります。
石油の終焉
ポール・ロバーツ光文社
光文社
¥ 3,150
通常24時間以内に発送
このレビューを書こうとする時、あるいは書いている時でさえ、私たちは石油を消費している。
既に『石油の終焉』という製本される段階で多くの燃料を使い、
さらに、レビューを執筆する際には、PCの電源を通じて、電気を使い、
また、家の中の電灯を照らして再び電力を消費している。
本書では、新しい技術とコスト面との折り合いがつかないと、
新技術への移行はかなりの時間がかかってしまうことを現実的にとらえている。
日本ではかなり進んでいると思われる「省エネ」技術も、
コスト面での競争力がなければ、やはり導入には二の足を踏むと言う。
とりわけ、アメリカでは経済成長と資源消費を同一視線で語ることが多く、
一方を犠牲にする政策はかねてから一切議論に上ってこない。
(最近は民間レベルでの突き上げが著しい)
というのも、政権サイドに多額の献金をしている団体が、
石炭・石油・自動車といった大口資源消費を前提とする企業群だからである。
現政権のブッシュ氏も温暖化対策にはかなり後ろ向きなのも、
こうした団体の後ろ盾があってだと考えれば、
頷けないことはない。
しかしながら、世界最大級の二酸化炭素排出国であるアメリカが環境に力を入れないと、
新興国に対するインパクトはやはり薄くなるといわざるを得ない。
アメリカと同じように、二酸化炭素を大量に排出する石炭を
火力発電所として建設を進めている中国やインドに対して、
説得力ある行為ができるかどうかは、やはりアメリカにかかっている。
設備の省エネ化、硫黄分の除去などといった技術が、
政府による規制とともに進んでいかなければ、
既に進行している温暖化現象を緩和することはできそうにもない。
(今すぐ排出をやめても、既に排出されている炭素が温暖化を進める)
加えて、温暖化によって得をする国ロシアの動向も目が離せない。
北極海の氷が解ければ、資源開発・輸送に活路を見いだせるからだ。
さて、ここまで書いてきて、電力消費を通じて、
どれだけの石油資源を消費することになたのだろうか?
「使わない」こと、勇気ある選択をそろそろしなくてはならないかもしれない。
既に『石油の終焉』という製本される段階で多くの燃料を使い、
さらに、レビューを執筆する際には、PCの電源を通じて、電気を使い、
また、家の中の電灯を照らして再び電力を消費している。
本書では、新しい技術とコスト面との折り合いがつかないと、
新技術への移行はかなりの時間がかかってしまうことを現実的にとらえている。
日本ではかなり進んでいると思われる「省エネ」技術も、
コスト面での競争力がなければ、やはり導入には二の足を踏むと言う。
とりわけ、アメリカでは経済成長と資源消費を同一視線で語ることが多く、
一方を犠牲にする政策はかねてから一切議論に上ってこない。
(最近は民間レベルでの突き上げが著しい)
というのも、政権サイドに多額の献金をしている団体が、
石炭・石油・自動車といった大口資源消費を前提とする企業群だからである。
現政権のブッシュ氏も温暖化対策にはかなり後ろ向きなのも、
こうした団体の後ろ盾があってだと考えれば、
頷けないことはない。
しかしながら、世界最大級の二酸化炭素排出国であるアメリカが環境に力を入れないと、
新興国に対するインパクトはやはり薄くなるといわざるを得ない。
アメリカと同じように、二酸化炭素を大量に排出する石炭を
火力発電所として建設を進めている中国やインドに対して、
説得力ある行為ができるかどうかは、やはりアメリカにかかっている。
設備の省エネ化、硫黄分の除去などといった技術が、
政府による規制とともに進んでいかなければ、
既に進行している温暖化現象を緩和することはできそうにもない。
(今すぐ排出をやめても、既に排出されている炭素が温暖化を進める)
加えて、温暖化によって得をする国ロシアの動向も目が離せない。
北極海の氷が解ければ、資源開発・輸送に活路を見いだせるからだ。
さて、ここまで書いてきて、電力消費を通じて、
どれだけの石油資源を消費することになたのだろうか?
「使わない」こと、勇気ある選択をそろそろしなくてはならないかもしれない。